もう少し考えてみなさい

かつて、何度か私の禅のお師匠さんに言われた言葉です。

話は飛びますが
人間の脳は、極力そのニューロンの発火を抑えたい
というエコ志向があります。

このエコ志向は
ホモサピエンス登場時には
ヒトは農耕という食料獲得手段を持っておらず
狩猟・採取が食料獲得の手段だったことに由来しています。

つまり、いつ食べられるかは
かなり運とタイミングという要素が大きかったということです。

脳も身体も、活動するためにはそのエネルギー源が必要です。
そして私たち人間は、口から入ってくるものしかエネルギーにできません。
いつ食べられるかわからない環境においては
省エネ志向とならざるを得ないということです。

蓄えやすくなるか、あるいは消費を抑えるか。
摂取できるエネルギーが不安定である以上
そうあらざるを得ないということです。

このように、ホモサピエンスの脳というものは、省エネ志向にできています。

ホモサピエンス登場から今までの歴史を見てみると
安定した食料獲得が可能になってからの時間など
まだまだ、ごく短くて
私たちのDNAは、いまだに原始時代の環境への適応形態のままです。

説明が長くなりましたが
そのような脳の省エネ志向のせいで
私たちの無意識という、「動物としての人間」(ヒト)の心は
空白を埋めて、とにかくわかったことにしたい
そんな働きがあります。

わからない間は考え続けますから
それだけニューロンが活動しなければなりません。
たくさんの発火を起こすので、エコとは言えないのです。

わからないことがわかると、スッキリします。
この「スッキリ」が、実は
私たちにそれ以上考え続けることをやめさせるためのなわけです。

法則化、パターン分類、タイプ分類など
私たちはとにかく、何かにあてはめて考えたがります。

feel と think は違います。
feel は感じるものであり、 think するためには言葉が必要です。

「知能をもつ人間」(人)という意味で
よく考えるためには、たくさんの言葉がいります。

どうしよう、どうしよう・・
この言葉だけがグルグル回っているような状態は
考えているのではなく、感じ続けているだけです。

感じているだけでは、何も解決できません。

無意識の省エネ思考のまま、すぐにわかろうとすると
たくさんの可能性を見落として
誤った理解を、自身の中での思い込みにしてしまうリスクが高くなります。

「もう少し考えてみなさい」
このお師匠さんの言葉は
すぐにわかった気になろうとするな
すぐに答えを求めようとするな
と言い換えることもできます。

わかったと思った瞬間、それを答えにしてしまいます。
それ以上考えなくなります。

早くわかりたい人ほど、誤りが多くなります。
タイプ分類やパターン分類は
すぐにわかりたいと思う、「ヒト」の無意識の心を安定させるためのものです。

省エネできると、気持ちが安定するという餌が働きます。
省エネするために、安心するという餌が作り出されるのです。
まず結論ありきになって
あらゆることをその結論につじじまがあるように結びつけて考えてしまう

「確証バイアス」というものを作り出します。

神様がいると信じ込むひとは
あらゆることを神様の思し召しである根拠として結びつけます。

「もう少し考えてみなさい」
このお師匠さんの言葉は
自分の心の安定だけを求めると、外部世界のことを誤って認識しますよ
そう教える言葉でした。

ある物事に対してすぐにわかろうとせずに
わからない
という、この感覚を長く持っておけるほど
より詳細に世界を眺めることができます。
わからないから、たくさん観察します。
そして、現実を誤らずに認識する可能性が広がります。

わからないという感覚を大事にすること
すぐにわかろうとせずに
わからないことをわからないまま抱え続けることのできる力

あらゆる角度から、客観的に考え続けることができる力
この力を「大人になる」と呼ぶのかもしれないですね。

あなたはどうですか?
すぐに答えが得られないと不安になる
そんな「人」として未熟な、子どもの心のままではありませんか?