~しなきゃと思うほど、動けなくなる

エリクソン

私たちは時々
何かしなきゃいけないことがあるのに、しようと思うのに
全然それに手がつかず、ずるずると先延ばしになってしまう
なんてことがあったりします。

しなきゃいけないと思えば思うほど、気が重くなってしまう。

したい気持ちと、したくない気持ち

何かをしたいのだけれど、できない。
それは、何かをしたい気持ちと同時に、面倒くさいだとか色々でしょうけれど、したくないという気持ちがある。
多くの場合、その、したい気持ちとしたくない気持ちとの葛藤で、動けなくなっているように思います。

言い換えると、しなきゃいけない = should と、できれば今はやりたくない =want to との葛藤ということもできます。

例えば私は、忙しくなってくると、部屋の中がめちゃくちゃに散らかってきます。
昔は、もうそうなってくると、自分の部屋に入るたびに「あぁ片付けなきゃ」って思ってしまうので、部屋に入るのがなんだか嫌になっていました。

散らかった部屋に入るたびに片付けなきゃという焦燥感のようなものを感じ、でも一向に手がつかない。
他のことをしていても、心のどこかに常に、部屋を片付けなきゃという思いが居座っていて、これって結構しんどいことでした。

それで、こりゃいかん、と思って、あることを決めてからは
散らかった自分の部屋に入るときの、あの独特の重い気持ちから解放されました。

何をしたかっていうと
毎月、お片づけの日を適当にスケジュールみて設定する。
そうして、その決めた日以外は、絶対に片付けをしてはいけない、というルールにする。
ただ、それだけですけれどw

けれど、そうするようになったことで

あーっ! また散らかってきたー、片付けなきゃ…
でも今日は疲れててむりー
あぁ、しなきゃと思うのに、この散らかった部屋を片付けることの気の重さで
めちゃくちゃ憂鬱だぁ!

みたいなストレスは、なくなりました。

片づけをしていいのは、設定した片付け日だけ
それ以外の日は、絶対にしちゃだめ
このルールがありますから
あまりにも散らかっている時には、片付け日がくるのを焦れるように待つようになります。
待ってるわけですから、その日がきたら、張り切って片付ける。
でも、そこそこレベルの散らかりの時は、まだ片付け日じゃないからと、散らかっててもたいして気にならなくなった

こんな感じです。

これ、エリクソンのパラドキシカル(逆説的)アプローチを真似てるんだなって気づいた人はいらっしゃるかしら。

ダイエットをしたいある女性に対してエリクソンのしたこと

このお話は、エリクソンのパラドキシカルアプローチのひとつの代表例みたいな治療例です。

ダイエットをしたいのに散々失敗して挫折したある女性が、エリクソンのところにやってきました。
その女性に対してエリクソンは
今からさらに10kg体重を増やしなさい、それまでは決してダイエットをしてはなりません
って指示を出します。

最初に、絶対にエリクソンの指示に従うという治療契約を交わしているので
その女性は苦しくも不思議に思いつつ、内心で「私は痩せたいのよ、なぜさらに太らなきゃいけないわけ?!」なんてエリクソンを罵りつつw
思いっきりケーキを食べたりしながら、太っていきます。

もともと、ダイエットをしたくてエリクソンのところにやってきているので
太りながら、もう痩せたくて痩せたくせて仕方ない!!と、超絶痩せたい気持ちが大きくなってくるんです。
で、なんとか10kg増量したとき、エリクソンから「今日からダイエットを始めなさい」と許可がでます。
今までさんざん失敗し、挫折もしていたのに、その女性は、あっという間に元の体重からさらにかなり痩せた(何キロだったか失念してしまった)っていう
そういう逸話があります。

私は、自分のお片付けにに対して、これをやってみたわけですが
決めたルールを絶対に破らない、というここを絶対守る必要があって、そこがポイントなんですが
自分でやってみたら、確かにこれは効果あるなぁと思った次第。

私のこの例では、少々散らかっていても、片付け日以外は片づけをしてはいけないので
片付けなきゃ…という焦燥感から解放されたこと、これが一番大きかったように思います。

should と wanto to

~せねばならない、というshould って
~したいwant to とは違うので、それをしなきゃって思うと気が重くなることって、案外よくあるように思います。

人は、結局、~すべき、~せねばならい、では動けなくて、~したい、でないと動けないもののようです。

エリクソンは、自分のクライアントに対して、want to を引き出す治療戦略をとっていました。
上述したダイエットした女性も、最初は、おそらくダイエットしたいと意識の心では思っていても、実は無意識の心は、ダイエットしなきゃ、というshould だったのでしょう。
それを、want to に変えたエリクソンの戦略は、まず一般的なセラピストならまずやらない、まさにアンコモンな戦略です。

一見、意味不明に見えるエリクソンの治療戦略は、実はその人のwant to を引き出したり、大きくしたりということをやっているという視点でみると
なるほどなぁ、とうなずけるものです。
とはいえ、なるほどなぁとは思えど、このダイエットの話、マネできるセラピストはほとんどいないよ~な気がしますが…

さすがに、エリクソンレベルのパラドキシカルアプローチは、ハードルが高いとしても
セラピストやコーチ、あるいはファシリテーターの方は、まずは、自分のその気持ちがshould なのか want to なのかを見極めて
どうやれば、建設的なwant to を作り出せるのか、大きくできるのか
色々と試してみると
案外、人にもどうやればいいかのヒントが得られるかもしれませんね。

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