どんな間柄でも、ともに過ごす時間の中で、その関係性は強固なものになったり、関係性が変わったり、終わったりするのはよく聞く話です。
大恋愛をして結婚した夫婦が数年後に離婚したり、親友と呼称していた友人がいつしか疎遠になったり、なんていう例は枚挙にいとまがなく
結局、双方がともに過ごす時間の中で、関係性は作られ続けていくものなのだと、私はそう思っています。
仏教でいうところの「縁」というものは、双方向的なものです。
そして、双方が、その関係性を大事にしたいと思っていて、そのための努力を双方ともにしたときにはじめて、縁が続くものなのだとも思います。
今日はそんなことをしみじみと思った話をいくつか。
運命の相手という気持ちにあぐらをかいていた
アイコさんがかつての配偶者ススムさんに初めて会ったのは、アイコさんの友人の結婚式の2次会だったとか。
割とよく聞く出会いですね。
アイコさんが、そこで初めてススムさんを見たとき、何かススムさんの周りが光っているように見えたそうで、その時のススムさんの着けていたネクタイの柄とかも、今でもハッキリと覚えているとのこと。
*あぁ、無意識のひとめぼれかぁと、私としてはそんなことを考えながら話を聞いてましたw
そこに参加していた何人かで、その後、3次会を・・という話になり
その場で、ススムさんと初めて会話をしたそうなのですが、とても話が合い、内心でアイコさんは「この人は私の運命の相手かもしれない」と思ったそうです。
そしてその出会いから何度もデートを重ね、1年後にアイコさんとススムさんは結婚しました。
ふたりはとても仲がよくて、結婚後のアイコさんはとても幸せそうでした。
けれど、いつ頃からだったでしょうか、アイコさんに変化が訪れたのは。
それまで、二人で旅行に行った先で起こったあれこれや、結婚記念日に二人で行ったレストランの話など、アイコさんの話はいつもススムさんの話題で、とても楽しそうだったのが、
気が付いたらアイコさんはあまりススムさんの話をしなくなっていました。
そして結婚から7年後、アイコさんとススムさんは離婚しました。
ススムさんの浮気の発覚が直接の原因だったそうです。
その後、5年ほどたってからアイコさんは再婚しました。
その時にアイコさんが語っていたことは、私にはとても示唆に富んでいると思えたものです。
アイコさんはこう語っていました。
ススムさんとのことは、最初、私たちはお互いに運命の相手で、夫婦になるべくしてなったのだと思ってたの。
だからなおさら、浮気が発覚した当初は信じられなかったし、でも事実なんだってわかってくるにつれて、ススムさんのことも妻帯者だとわかっていて不倫を続けた相手の女のことも憎かった。
運命の相手なのに・・って、神様を恨んだりもしたのよ。
でもね、よく考えたら、私はもしかしたら運命の相手という幻想にあぐらをかいていたのかもしれない。
今の旦那はね、別に出会ったとき光ってみえたわけでもないし、運命の相手だなんて気持ちも起こらなかったの。
でもだからこそ、お互いが死ぬときに、あぁこの人は運命の相手だったんだなって、そう思えるようにこれからの時間の中でお互いに努力していこうねって、そう二人で話してるの。
血がつながってなかったから、かえって
アイコさんのその話を聞きながら、私はなぜか、別の友人キミエさんの話を思い出していました。
キミエさんは、実はもともと孤児で、1歳の時に今のご両親に養子として引き取られたのだそうです。
成人式の日に、それをご両親から告げられたとか。
そんなキミエさんがお父様のご葬儀の時に言ったことです。
私と両親は血のつながりは全くないけれど、親子として過ごした何十年の中で、私にとって父は理想的な父親でした。
私の意志を常に尊重してくれたし、私が間違ったことをしたら、ちゃんと叱ってもくれた。
大人になった今考えると、もしかしたら養子だったからこそ、父は余計に父親として頑張っていたのかもしれないなって思うの。
養子だから・・って私に卑屈な思いや悲しい思いをさせないようにしてくれてたんだと思う。
本当の父だと私が思えるように尽くしてくれてたんだと思うの。
本当の父であろうとしてくれていた父との時間の中で、私と父は本当の親子になれたんだと思う。
もし今、私を捨てた実の親が名乗りでてきたとしても、私にとってはその人は他人だとしか思えないだろうとも思うの。
名前が決めるのではなく、その在り方をそう呼ぶ
時々、夫婦なんだから、恋人なんだから、隠し事をしないで、だとか
夫婦なんだから、恋人なんだから、〇〇してくれて当然でしょ
なんてことをおっしゃる方がおられますが
夫婦であろうが、恋人であろうか、隠し事をされたり、〇〇してあげたいと思えない
そんな関係性しか築けていないのに、夫婦だからとか恋人だからと要求するのは、何か本末転倒な気がしたりします。
私は思うのです。
一時とても仲のよい友人だったとしても、長い年月のつきあいの中で、お互いを思いやることなしには、いつか切れてしまうだろうし
どんなに大恋愛をしても、夫婦として共に暮らす中で、お互いを尊重し合えなければ、きっとその大恋愛は一時のもので終わるだろうし
親子ですら、こどもが大人になって親の経済的庇護を受けなくても済む年齢になったとき、親と没交渉になることも、結構よく聞く話だし。
どんな関係性も、双方がそれをよいものとして維持しようという気持ちと、その気持ちに見合う言動なしには、いずれなくなってしまうのではないかと思います。
アイコさんの話とキミエさんの話は、私に、人と人との関係性について、大切なことを教えてくれました。
そして、それが独りよがりな思い込みになっては意味がないということも。
私が人と人とのコミュニケーションについて、真剣に学び、実践していこうと思ったひとつのキッカケだったようにも思います。